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ファクタリングの基礎知識

偽装ファクタリングとは|貸金業との線引きと契約前に確認する5項目【2026年版】

ファクタリングは、売掛債権を期日前に買い取ってもらう取引です。法的には債権の売買で、借入ではありません。ただし、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」と書いてあっても、実態によっては貸金業に当たると判断されることがあります。金融庁が注意喚起を出していて、実際に裁判でも判断が分かれています。

このページでは、金融庁の公表資料と、そこで紹介されている裁判例をもとに、売買と貸付けの線引きがどこで分かれたのかを整理します。あわせて、契約前に自分で確認できる項目をまとめます。読んだだけで違法かどうかを判定できるようにはなりませんが、専門家に相談すべき契約かどうかの見当はつけられます。

ファクタリングは債権の売買。ただし実態で判断される

金融庁は「ファクタリングの利用に関する注意喚起」で、ファクタリングを「事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス」とし、法的には債権の売買(債権譲渡)契約だと説明しています。そのうえで、次の2つに注意するよう呼びかけています。

  • ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されていること
  • ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるものは、貸金業に該当するおそれがあること

重要なのは2つ目です。契約書の表題や条項の形だけで決まるわけではありません。金融庁は、ノンリコースの規定があるかといった形式的な要素だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断される、と明記しています。

金融庁が「偽装ファクタリングの疑いがある」として挙げている具体例は、受け取る買取代金が債権額に比べて著しく低額であるケースです。また、譲渡した債権の回収が業者から売主に委託されていて、売主が集金できなかった場合に「売主が債権を買い戻す」「売主自身の資金で業者に支払う」ことになっているものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。

貸金業に当たるかを分ける4つの判断材料

金融庁が紹介している裁判例を読むと、裁判所が共通して見ている要素があります。これらは「どれか1つに当てはまれば違法」というものではありません。裁判所はいずれも事案ごとの事情を総合して判断しています。あくまで、契約書を読むときにどこを見ればよいかの手がかりです。

  • 売掛先が払わなかったときのリスクが、実際に業者へ移っているか。契約上そう書いてあるかではなく、実際に移転したと評価できるかが見られています
  • 買い戻しや、自己資金での支払いが予定されていないか。名称は買戻し、額面金額の支払義務など契約によって違います
  • 表明保証などで、売主に実質的な保証を求めていないか。後述する事案では、これが決め手の一つとされています
  • 手数料(額面と買取代金の差額)が、担保目的を推認させるほど大幅でないか

4つ目について、金融庁も裁判例も「何%を超えたら違法」という線は示していません。手数料が高いという理由だけで違法になるわけではありません。他の事情とあわせて見られています。

判断が分かれた7件の裁判例

金融庁が参考として紹介しているのは、貸金業に該当しないと判断された2件と、貸付けに当たるなどと判断された5件です。

以下は金融庁が参考として紹介している裁判例の概要を整理したものです。判決全文を当サイトで検証したものではなく、実際の判断には各事案固有の契約条項や取引事情が関係しています。なお、給与ファクタリングの最高裁決定は、この7件とは別の論点なので第6節で紹介しています。

貸金業に該当しないと判断された2件

裁判例 判断の決め手として挙げられている事情
東京地裁 令和2年9月18日 業者が償還請求権を持たず、売主も買戻しを予定していないことから、実質的にも不払いリスクが業者に移転していると評価できる。対抗要件の具備は猶予されていたが、業者の判断で具備が可能だった。手数料も担保目的を推認させるほど大幅ではない
東京高裁 令和4年6月15日 回収できなかった額について売主が責任を負うとはされておらず、実際に債務者の無資力の危険が業者へ移転したと認められる。手数料も実質的に担保目的と推認させるほど多額ではない

貸付けに当たるなどと判断された5件

裁判例 判断の決め手として挙げられている事情
大阪地裁 平成29年3月3日 業者が不払いリスクをほとんど負っていない。債権の額面とは無関係に金員の授受がされていた。金銭消費貸借契約に準じるものと判断
東京高裁 令和3年7月1日 債務者が弁済しなかった場合に、売主が債権額以上の金額を業者へ支払う旨の公正証書を作成していた。業者が負担すべき不払いのリスクを負っていない。これらの事情などを考慮し、貸金業法上の貸付けに当たると判断された
名古屋地裁 令和3年7月16日 売主は債務者の資力を担保しないと規定されていたが、譲渡債権の性質と、譲渡日から支払日までの期間の短さから、不履行の可能性が極めて低い。これらの事情などを考慮し、貸金業法上の貸付けに当たると判断された
東京地裁 令和4年3月4日 ノンリコースの規定はあるが、抗弁事由がないこと・支払停止の状態にないこと・破産手続開始原因がないことなどを売主が表明保証することとされており、売主に債務の保証を求めているのに等しい
札幌高裁 令和4年7月7日 債権譲渡が発覚すると取引先の信頼を損ね事業継続が困難になるため、売主は何としても買戻期限までに買い戻さなければならない状況にあり、業者もそれを認識していた。事実上、譲渡債権を担保とする金銭消費貸借に近い経済的機能。公序良俗に反し無効

並べると、「売掛先が払わなかったときに、結局だれが負担するのか」が繰り返し見られているのが分かります。該当しないとされた2件は、リスクが実際に業者へ移っていたと評価された事案です。

ノンリコースと書いてあっても、それだけでは決まらない

上の表で挙げた東京地裁 令和4年3月4日の事案は、契約書にノンリコースの規定があったにもかかわらず、金銭消費貸借契約に該当すると判断されたとされています。理由として金融庁が紹介しているのは、売主が次のような内容を表明保証することになっていた点です。

  • 抗弁事由が存在しないこと
  • 支払停止の状態にないこと
  • 破産手続開始原因が存在しないこと

これらは、売掛先からの支払いを妨げる事情や、支払不能につながる兆候などがないことを売主に保証させる内容です。こうした保証の範囲や、違反したときに負う責任によっては、契約書にノンリコースと書かれていても、売主が実質的に不払いリスクを負う場合があります。金融庁はこの事案を「売主に債務の保証を求めているのに等しい」と紹介しています。

ここで問題になっているのは、表明保証という条項があること自体ではありません。どの事実を保証させ、違反したときにどんな責任を負わせるかです。表明保証は通常の債権譲渡契約でも使われます。

この判決の全文は、裁判所の判例検索で確認できませんでした。当サイトが確認できたのは金融庁の紹介内容までです。実際の事案にはほかにも事情があった可能性があります。

ここから言えるのは「ノンリコースと書いてあれば安全」とは限らない、ということまでです。逆に、表明保証があれば必ず貸金業に当たる、ということでもありません。裁判所は他の事情とあわせて判断しています。

契約前に契約書で確認する5項目

以下は、契約書や見積書で自分で確認できる項目です。当てはまったら違法、という意味ではありません。当てはまる項目が多いほど、契約する前に弁護士に相談する理由が増えると考えてください。金融庁も、少しでも心配な点があれば弁護士などの専門家に相談するよう案内しています。

  • 売掛先が払わなかったとき、自分が払う義務があるか。「買戻し」「額面金額の支払義務」「返還義務」など、契約書での呼び方はさまざまです。条項の名前ではなく、お金の流れで読んでください
  • 表明保証の範囲。売掛先の支払能力や、支払停止・破産原因がないことまで自分が保証する内容になっていないか
  • 回収と送金の仕組み。2社間では、売掛先からの入金を自分がファクタリング会社へ送金します。送金が遅れた場合にどうなるか、遅延損害金の定めがあるかまで見ます。なお、受け取った回収金を約束どおり送金する義務と、売掛先が払わなかったときに自分が肩代わりする義務は別のものです。前者は通常の契約でもありますが、後者があると不払いリスクが自分に残ります。契約書でどちらなのかを読み分けてください
  • 額面に対して実際に手元に入る額。手数料率だけでなく、振込手数料・事務手数料・登記費用などを引いた後の金額で確認します。金融庁は、受け取る買取代金が債権額に比べて著しく低額なケースを偽装ファクタリングの疑いがある例として挙げています
  • 債権譲渡通知と債権譲渡登記の条件。いつ、誰の判断で行うのかを確認します。通知や登記をどう扱っていたかは、裁判例でも検討の対象になっています

当サイトでは会社別ページで、各社の公式サイトと利用規約に書かれた償還請求権・買戻し・費用負担の記載を確認しています。契約書を読む前の下調べには会社の選び方7つと手数料の相場の見方もあわせて見てください。

給与ファクタリングが貸付けに当たると判断された理由

ここまでは事業者の売掛債権の話です。個人の給与を対象にした「給与ファクタリング」は別で、金融庁は貸金業に該当すると明示しています。

最高裁も同じ判断を示しています。令和5年2月20日の第三小法廷決定(令和4年(あ)第288号)で、無登録で「給料ファクタリング」と称する取引を行っていた被告人について、貸金業法違反と出資法違反の成立を認めた原判決が是認されました。この決定は全文が公開されているので、当サイトで内容を確認しています。

決定によると、この取引は、労働者から使用者に対する賃金債権の一部を額面額から4割程度割り引いた額(額面のおよそ6割にあたる金額)で譲り受け、同額の金銭を交付するものでした。契約上は使用者の不払いの危険を業者が負担するとされていましたが、実際には全ての顧客との間で買戻し日が定められ、債権譲渡通知が留保されていました。

最高裁が「貸付け」に当たるとした理由は、おおむね次の流れです。

  • 労働基準法24条1項の趣旨から、賃金債権を譲り受けた者が使用者に直接支払を求めることは許されない(最高裁 昭和40年(オ)第527号 同43年3月12日 第三小法廷判決・民集22巻3号562頁を引用)
  • そのため業者は、実際には債権を買い戻させるなどして顧客から回収するほかなかった
  • 顧客も、譲渡を勤務先に知られないよう通知の留保を希望しており、事実上、自ら買い戻さざるを得なかった
  • したがって、形式は債権譲渡の対価でも、実質は返済合意がある金銭の交付と同様の機能を持つ

この事案では、無登録での貸付けが969回・504名分に及んだと認定されています。事業者向けのファクタリングと給与ファクタリングは別の話ですが、「形式ではなく実態で判断される」という考え方は共通しています。

なお、最高裁の決定文は「給料ファクタリング」、金融庁の注意喚起は「給与ファクタリング」と表記しています。同じものを指しています。

登録の確認方法と相談先

貸金業を行うには財務局または都道府県の登録が必要で、無登録営業は刑事罰の対象です。金融庁は、利息制限法と出資法の上限金利を守る必要があることと、年109.5%を超える利息の契約をした場合は消費貸借契約自体が無効になることも示しています。

登録の有無は、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで調べられます。ただし、これは貸金業の登録を確認するものです。ファクタリング業者は債権の売買を行う事業者で、貸金業登録を持たないのが通常です。登録がないこと自体は違法を意味しません。判断材料の一つとして使ってください。

悪質な取立てを受けた場合は警察に相談してください。金融庁は、権利の実行であっても社会通念上認められる程度を逸脱すれば違法となり、恐喝罪や脅迫罪が成立することがあるとした最高裁判例(昭和27年5月20日判決)に触れています。

相談先は次のとおりです。

  • 金融庁 金融サービス利用者相談室(平日10:00〜17:00) 0570-016811
  • 警察相談専用電話 #9110
  • 日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター 0570-051051(土日祝・年末年始を除く9:00〜17:00)
  • 消費者ホットライン 188

契約してしまった後でも、相談する価値はあります。上に挙げた裁判例には、金銭消費貸借契約に該当すると判断されたものや、公序良俗に反し無効と判断されたものが含まれています。どう扱われるかは事案によって違うので、契約書を持って弁護士に相談してください。

このページの根拠

  • 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(ファクタリングの法的性質、偽装ファクタリングの例、貸金業該当のおそれ、参考裁判例7件、給与ファクタリング、上限金利、相談窓口)
  • 最高裁判所 令和5年2月20日 第三小法廷決定(令和4年(あ)第288号・貸金業法違反、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律違反被告事件)。裁判所ウェブサイト(全文PDF)で全文を確認
  • 最高裁判所 昭和40年(オ)第527号 同43年3月12日 第三小法廷判決(民集22巻3号562頁)。上記決定が引用しているもので、判決文そのものは確認していません
  • 裁判例7件のうち、東京地裁 令和2年9月18日/東京高裁 令和4年6月15日/大阪地裁 平成29年3月3日/東京高裁 令和3年7月1日/名古屋地裁 令和3年7月16日/東京地裁 令和4年3月4日/札幌高裁 令和4年7月7日は、金融庁が紹介している内容の範囲で記載しています。判決文は確認していません
  • 確認日:2026年10月10日
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